戀    恋

      逢はざれば 今生の悔い 夕氷雨
      寒紅を 足してをみなの 意地通す
      ひとり夜に 唇かんで 忍ぶ冬
      彼女との 微妙な距離に 冬林檎
      火が紙を 腐食する冬 手紙焼く
      冬の日に 透かす十指の さびしけれ

      汚れけり 斑の雪も 畦道も
      白魚や 恋に賞味の 期限あり
      好きやねん 春曙の 明の星
      ふらここは 横には漕げず 初恋も
      外に出でて などかは春を 語らざる
      恋実験 フラスコの春 沸騰す
      見ないでと 云ひて気をひく 春の宵
      春ショール 両手ひろげて 鳥になる
      春風に 色香のあるを 疑はず
      桃の花 君くれなゐに 頬そめて
      散り急ぐ 花の下にて ひとを待つ
      細やかな 和心に逢ふ 春の暮
      朧夜や うなじにかかる ほつれ髪
      恋よりも 戀が重しか 花林檎
      春慕情 手を振り合へば なほのこと

      五月来る 雨は真珠か サファイアか
      牡丹の芽 炎の色に 濡れて立つ
      うしろ手に キスする夕べ 聖五月
      聖五月 二十歳の君が 風になる
      賛美歌や 五月空より 白微光
      風が繰る 詩集のページ 窓薄暑
      君影草 ひと夜の夢の はかなくて
      わが指に とまれや籠の 姫蛍
      不時着の恋 痛恨の青時雨
      身の丈の 恋なぞあるか 今年竹
      囚はれの 影だに持たず 水中花
      渚より 夏の女神の 濡れ出づる
      夏帽の 中にも飛沫 はじけ来る
      好きですと 言えぬ少年 須磨サイダー
      内角に くひこむシュート 草矢射る
      大夕焼 空は火の色 恋の色
      微笑みをください 氷菓とけぬ間に
      空広く 光まぶしき 蝉の夏
      海色に 染まずに行きし 白日傘
      夏果てて 波打ち際の 片し貝

      華麗なる 嘘をひらりと 秋扇
      君が名を 呼べば悲しよ 花桔梗
      青い鳥 探しあぐねて 蛍草
      思ひ出は ほろ苦くして 秋薊
      紅萩の 散りて紫紺の 花の屑
      白桃や まろきものみな 美しく
      白指に 攫はれゆきし 黒葡萄
      生々流転 千草の風の あや縺れ
      見えますか 聞こえますかと 霧のひと
      さよならは 言はずに去りし 霧の中
      秋恋情 ますぐに落つる 砂時計
      君添へば 四つの影行く 十三夜
      君恋へば 影に色あり 秋闌くる

 俳子の「守破離」俳句

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