雪 ( 2 )   *

        冬…雪催ひ 裏六甲の 空狭し
          雪のこゑ 聞ゆるほどの 朝しじま

          雪二寸 踏み入る音の 軽やかに
          雪二寸 歩くところに 道ができ

          すがる手を 握り返して 雪の坂
          転ぶひと 笑ひて転ぶ 雪の朝
          老いどちも 騒ぎをるなり 雪二寸

          雪文字や 指の震えを そのままに
          菜畑の 緑増す見ゆ 雪の朝

          天穹の 雪はふはりと 地に届く
          山々の その峰々の 雪冠

          半身を 雪に埋めり 六地蔵
          冠雪 五百羅漢の 頭や肩に

          里山や 竹は撓ひて 雪積まず
          風が来て 大樹こずゑの 雪散らす


          雪降るを 見上ぐる我や 天に墜つ
          天虚より 雪の無限が 落ちてくる

          天仰ぐ 即ちそこが 雪奈落
          海へ降る 雪見下ろさば 海奈落

          幻獣の 遠吠えのごと 吹雪く夜
          肉球の 跡が点々 雪の朝

          雪の夜や 虚城に刻む 影蒼々
          雪見酒 酔ひ足らざれば 足しもして

          雪よ降れ なべてを白く 染めよかし
          悲しみの 君に悲しみの 雪景色

          雪よ降れ わが死に刻を 告げよかし
          雪よ降れ わが屍を 埋めよかし


          またひとつ 消ゆる家の灯 雪積むる
          雪積むや 家の灯ひとつ 埋め残し

          雪やこんこ 狐こんこん 今夜来ん
          静か夜や 悲をつのらせて 雪積むる

          雪こんこ 妹は寝ぬるか 兄まだか
          雪月夜 眠れや眠れ 吾子眠れ

          朝日子や 玻璃にはりつく 六つの花
          瑠璃窓に 張りつき合うて 雪の花

          窓開く 夜明けの雪の 明るさに
          門扉まで 夜来の雪を 下駄が下

          雪積むや 埋もれて円か 石灯籠
          形ある ものみな深き 雪が下


          ほつれ毛に 降りつく雪の ひとかけら
          雪降るや 石の天使は 空を向き

          ふるさとを うたう歌姫 雪しまく
          雪の夜や 詩心身ごもる やもしれず

          風花や 実らぬ恋と 知りつつも
          廃寺への 藪の細道 しづり雪

          長老の 長き眉毛に 六花
          天空の 花や舞ひきて 六花

          風雪の 稜線長し 攀じ登る
          雪嶺や 登りえずして 帰り来し

          雪嶺を 越えたる雲の 速走り
          雪嶺の ケルンにひとつ 石を足す

          老若も 男女も問わず 雪を掻く
          除雪夫や 空の重さに 背をかがめ

          掘りこめば ほのかに青き 雪の洞
          雪国の 雪の奈落へ 雪捨てに

          遠くより 見れば絶景 雪景色
          いづこにも 瑕疵なきごとく 雪一枚

          万古より 降り積むるかに 雪のこゑ
          山里の 音を忘れて 雪積むる

          遺書を書く 音なく雪の 積むる夜に
          ひとりでは 死ねぬか 冬の情死行

          雪降るや 戯れに着る 死衣装
          雪降るや 白装束は 死の衣装

          これもフェイク・ニュースか 雪の窓くもる
          雪暗や 谷深ければ なほのこと    俳子

            鈴蘭台より望む雪の六甲山

               神戸電鉄粟生線

               神戸市北区・鈴蘭公園

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