帰 り 花  *

        秋…一花二花 三花十月 桜かな
          離宮邸跡や 十月桜咲く

        冬…痛さうに 切なささうに 帰り花
          さみしさの つのる極みに 帰り花

          なんの木の 花やも知れず 帰り花
          日当たりて 薄き影さす 帰り花

          昔日の 華には届かず 帰り花
          花びらの 色は薄しも 帰り花

          色褪せて 咲くも貧しき 帰り花
          貧しくも 未練がましき 帰り花

          かりそめの 誓ひめきたる 帰り花
          遅れ来て 咲くほかはなき 帰り花

          老いらくの 未練なりしか 狂ひ花
          老いぬれば 帰り花より 忘れ花

          咲く色を 空は返さず 帰り花
          涙すは 一度ならずや 帰り花

          滅びゆく ものが抗ひ 帰り花
          帰り花 過ぎ去りし日は 帰り来ず

          雨あとの わづかな晴間 帰り花
          帰り花 ぢぢばばふたり 腰のばす

          帰り花 けふという日も あすの日も
          帰り花 ひたむきにして 咲ききれず

          華麗なる 旧家が華や 帰り花 (須磨離宮公園)
          古民家の 庭の広きに 帰り花

          再起きす 山のホテルに 帰り花 (六甲山ホテル)
          帰り花 あの日あの時 あの場所で

          小惑星 リュウグウよりや 帰り花 (小惑星探査機「はやぶさ2」)
          帰り花 三億キロの 遥かより

          帰り花 まぶた閉づれば 見ゆるなり
          帰り花 あきらめざれば 人もまた

          玉垣に 隠れ咲くかに 帰り花
          栄光の 残滓めきたる 帰り花
          帰り花 古女房に 惚れ直す

          一花咲き 次はなかりし 帰り花
          散るなかれ 一輪のみの 帰り花    俳子

             烏原貯水池・花の休憩所の 十月桜

           須磨離宮公園・植物園の 十月桜

            六甲山ホテル・ツツジ(帰り花)

         しあわせの村・薬草園のボケの花(帰り花)

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