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          夏…横向きに 入る古書肆屋 黴臭ふ
            黴臭き古書肆や 黙の横歩き

            鼻つくは 黴か埃か 蔵臭ふ
            味噌蔵の あるじがごとき 麹黴
            赤貧の 入らば出られぬ 黴の家

            小さくも 命のかぎり 黴菌糸
            黴咲きて 青き胞子を 撒き放つ

            嫌はれて 咲くも妖しき 黴の花
            人類の 滅びし後も 黴の花
            花咲くも 困りしものぞ 黴の花

            俳子庵 あるじ黴ぶれば みな黴びて
            黴の家 あるじ最も 黴錆びて

            押入れの 黴の臭ひが 脳天へ
            忍び来て 脳にはびこる 白き黴

            古色蒼然 頭の中まで 黴生やす
            黴生うや わがニューロンも 古黴びる

            おとがひに 黴生ゆるごと 無精髭
            拭ひても なほ黴臭き 面構へ

            招運の 座敷わらしも 黴び古りて
            黴の世や 釘は赤錆び われは寂ぶ

            四畳半 フォークなつかし 黴臭し
            隔世や わが青春の 書の黴びて

            黴払ふ 夢持つころの 愛読書
            わが恥を 晒すがごとく 書を曝す

            黴の書を いまだ捨てざる 老書生
            ゐるだけで 妙に落ち着く 黴の部屋

            意に満たぬ こと多くして 黴深し
            黴生うや 死しても伸びる 髪と爪

            人間は 地球の黴ぞ 菌伸ばす
            パスワード 忘れて黴の 茂み中

            万札も 青く黴れば 触れがたし
            黴わきて バイキンマンの ハヒフヘホ   俳子

      革財布を濡れたままにしていて、青黴がはえてしまっとお札

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