蛇 ( 1 )   *

        夏…一草も 揺がさざれば 夏の蛇
          卵熟る 子蛇の歯牙も 育つらむ

          古寺や あらぬところに 青大将
          鼠かも 青大将の 腹太し

          ゐるだけの 鼠捕へて 寺の蛇
          神の山 なれば蛇また 神の使徒

          一瞬や 撓ひ飛びたる 家の蛇
          藪出でて 草に紛るる 烏蛇

          蛇臭し 蛇這ふあとの 草までも
          道なさぬ 道に髑髏の 烏蛇

          くちなはや 縺れもせずに 円座解く
          円座解き 全き蛇と なりにけり


          水尾ひきて 夜叉ヶ池ゆく 蛇の首
          八の字に 水尾引きながら 蛇渡る

          早む瀬を 頭ぬらさず 蛇渡る
          水渡る蛇や まつたき身をさらし

          濃みどりの 水面明りに 蛇泳ぐ
          蛇泳ぐ 沼に油紋の 青ひろげ

          水面行く 雲を乱さず 蛇渡る
          水の雲 蛇を渡るを 受け入れて
          水の面に 影をとどめず 蛇渡る

          激流を ものともせずに 蛇渡る
          水ゆれて 影さへ光る 蛇の道

          素早しや 池面をわたる ヤマカガシ
          蛇渡る 水尾は汀に 届かざる

          鮮烈や 水面に残る 蛇の跡
          蛇失せて 水面を均す 風少し


          蛇よぎる 驚きの声 こゑなさず
          蛇の尾の 隠るるまでの 長さかな

          蛇這へり 悪しき性より 逃れんと
          日表に 残す翳濃し 蛇逃ぐる
          瞠目や 蛇の尻尾の 消ゆるまで

          蛇追ふも 及び腰なる 漢かな
          くちなはの 我の上いく 慌てぶり

          蛇失せて 草の騒めき 消え残る
          逃げ去りし 蛇の残像 毒蛇めく


          刺青の 男の背より 青大将
          青大将 われより犬を 恐れ避く

          逃げる吾に 驚き逃ぐる 蝮の子
          蛇逃ぐるより速し 我遁走す

          小心を 隠す術なし 毒蝮
          木陰濃し 蝮出でくる 沢辺道

          むくむ手で 飯匙倩を手玉に 軟膏売
          壜中の 蝮あはれや 直立す
          蝮酒 あふりてにはか 獣めき    俳子



      前頁(蛸)へ  この頁のTOPへ  次頁(蛇2)
     「蛇1」関連ページ…春の蛇(春) 蛇2(夏) 穴惑(秋)
  575 俳子ワールド
 俳子の俳句横丁
 俳子のインターネット歳時記
        INDEX版
 神戸観光名所歳時記
 須磨・句碑めぐりの旅
 俳子の守破離俳句
 俳子の独断状
   ホームへ

 俳子のインターネット歳時記 夏


 俳子のインターネット歳時記 写俳版