夕 桜 / 夜 桜  *

             春…花びらに 翳をひそめて 夕桜
               花翳の 見つめるほどに ゆらぎをり

               夕桜 君くれなゐの 彩ごろも
               夕桜 手折るは誰そ かの人そ
               去りがてに 佇むひとや 紅枝垂


               黄昏れて 老樹桜の 薄明り
               善福寺 枝垂桜の 昏れのこる

               人の世は 移れど須磨の 宵桜
               湯煙と 花でもてなす 有馬宿

               花灯り もれきて闇の 艶めける
               宵闇に 浮かびて消ゆる 花衣


               夜桜や 慢ずるほどの 恋持たず
               夜桜や 呼びて応ふる 連れもなく
               夜桜や 縁なきひとと すれ違ふ

               酔ひどれの 夜目にも近き 桜かな
               夜桜の 遠きは星の 屑めきて

               夜桜に 死者のやすらふ 小暗がり
               夜桜の 花より闇の 息づける

               夜桜や そばに明るき 燈ひとつ
               池の面の 逆さ夜桜 風の紋

               極上の 花見疲れに 湯くたびれ
               三味の音も 酒も過ぎたり 真夜桜    俳子

           善福寺の樹齢270年の糸桜(枝垂れ桜)

           須磨浦公園・「須磨観光ハウス 味と宿 花月」の桜


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