落    花  *

          春…いくつもの 光こぼして 桜散る
            咲き満つる 今この刻に 花ぞ散る

            人はいさ 心も知らず 花ぞ散る
            さくらさくら さくらのはなの ちりぬるを

            ときをりは 風立ちをりて 花吹雪
            散る花の しばしとどまる 風の道

            湯の宿の 日暮れを急ぐ 飛花落花 (有馬温泉)
            簪に 飛花落花の 艶姿

            咲きてはや 敦盛桜 散り急ぐ (敦盛胴塚)
            敦盛の 花の奈落の 五輪塔

            落武者の 肩に花散る 塩屋道 (塩屋)
            裸眼より こぼるる花や 闇へ散る

            常なれと 願へば花の 散りやすし
            残花散る 平家落人 ゆかりの地

            飛花落花 供割事件 勃発地 (三宮神社)
            訳ありて 訳なきごとく 桜散る

            ほろほろと 散りて綻ぶ 花の春
            拙速を 尊ぶなかれ 落花急


            花散るや 風なき空の 明るさに
            いささかの 風もたよらず 桜散る

            吹かずとも 散りゆく桜 手に受けて
            散る花を 受くるも神の たなごころ

            花びらの どれも触れずに 桜散る
            花散るも 神に背かず 静々と


            亡きひとの 空をこぼるる 桜花
            散り急ぐ 花の下にて ひとを待つ
            ひと想ふ 心急かせて 桜散る

            君想ふ ゆゑにほろほろ 散る桜
            散らば散れ 色移ろひし 桜ばな

            風のあと 追ふかに花の 散りゆける
            僅かなる 花散る音を 風に聞く

            地に憂ひ 空に喜楽や 花吹雪
            天宇より 尽くることなき 落花かな

            桜散る 余白を鳩の 影過ぐる
            裸眼より こぼるる花や 闇へ散る

            満開の 桜もいまは 風の葬
            咲くからに 散り落つからに 桜花

            まるでもう 空華乱墜 さくら散る
                           風といふ 花盗人に 散るぞえな

            咲くからに こぼるるからに 花万朶
            咲き満つる 花には花の 薄ら闇

            人騒ぐ 花咲くからに 散るからに
            咲くよりも 散るを華やぐ 老い桜

            花散るや 水やはらかき 池の面に
                           桜散る 流水あれば 水に沿ひ


            人知れず 明日は散りなむ 山桜
            谷深し なにに急かれて 花や散る

            反骨の 花びら薄し 残花散る
            花散るを 意にも留めずに 昼寝猫

            花散るは 引き算散れば 気持ち萎え
            花散るは 足し算散れば 屑増ゆる

            風と来て 肩を離るる 花の屑
            花散るや 風に遅れて 二三片

            遠のくは ひとのみならず 桜散る
            桜散る 男は黙して 去るのみか

            振り向くな 見れば花散る 思ひ散る
            空明の 光に花の 散りぬるを
            振り向かず 去りてゆきたし 落花急   俳子

             再度公園の池に散る桜

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