蝶 ( 2 )  *

         春…ひとつ来て ふたつ去りゆく 双蝶に
           ひとつ来て 別れてふたつ 双胡蝶

           双蝶の ささめごと聞く 昼日中
           双蝶や 誰れもが恋の 迷ひ人

           双蝶の 隠れあふかに 渦なして
           双蝶の あひもつれつつ 天山へ

           恋ひ恋ふる 双蝶激し 乱れ舞ふ
           譬ふなら 君はつや花 われは蝶

           絡まりて 火柱のごと 巴蝶
           山風の 来たりて蝶を 弄ぶ


           マジシャンの 手より舞ひたつ 紙の蝶
           てふてふが 百千万と 輪転機

           春の蝶 ドローヒッチの 結び目に
           蝶結び 解きて花より 春の蝶

           8Kの 静止画像を 光り蝶
           てのひらの 時間が止まる 蝶止まる

           胡蝶追ふ 夢のかけらを 追ふごとく
           荘周の 夢路に飛びて 胡蝶なる

           遅々として 時は進まず 蝶の昼
           とまりたき 花はいずこか 夜の蝶

           日を受けて 白さ耀ふ 紋白蝶
           見目よりも 汚れし白や 紋白蝶

           おのが身の 軽ろきに舞ひて 蝶狂ふ
           風に舞ひ 風にもつるる 蝶となる

           子の網の 紋白蝶に 追ひつけず
           見失ふ 蝶こそよけれ 空無辺

           ビー玉や 空にかざせば 黄蝶舞ふ
           葉に紛る 枯葉と見せて 木の葉蝶


           蝶いとし 近くば指で 挟みもし
           蝶の羽 つまみて放つ 夢魔術
           罪犯す 指紋残れり 蝶の翅

           鱗粉の こぼれぬやうに 蝶放つ
           蝶鱗粉 つくづく見つむ 指の腹

           大仏の 螺髪へ赤き 平家蝶 (能福寺)
           蝶舞ふは きのふの夢か けふの絵か

           義経の 馬つなぎ松に 平家蝶 (鵯越墓園)
           蝶紋を 出でて朧の 蝶となる

           蝶飛べば 光こぼるる 青み空
           寄る花に 止まりて静か 蝶老いぬ

           老蝶の 翅より散りぬ 銀の粉
           鱗粉の 剥げて飛べざる 蝶ひとつ

           白壁に 影を残して 紋黄蝶
           地に落ちて 翅の千切るる 紋黄蝶

           蝶逝くや いとしきひとの 消ゆるかに
           死に蝶や 空の無限へ 消ゆるてふ


           支え糸 切れて落下の 蝶蛹
           蝶になる こと叶はざる 定めとも

           一度とて 翅を閉ぢざる 蝶標本
           二枚羽と 見えて胡蝶の 四枚羽

           死蝶愛づ 狂ひし愛の 底知れず
           少年や 百年後にも 蝶追ひて   俳子

                紋黄蝶


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