風 船
 
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     2022年 春 ( 4 )   *  
 数式を 息かけて消す 大試験
 消しゴムで 消して奮起の 大試験
 目を閉ぢて 天の沙汰待つ 受験の子
 傷心の 肩に手を置く 大試験
 啓蟄の 闇より出でよ 恋の虫
 啓蟄の 産道抜けて 吾子天使
 啓蟄の コインロッカー とびら百
 裏路地は 野良の縄張り 猫の恋
 浮かれ猫 恋の奈落の 闇走る
 春津波 山へ逃ぐるも てんでんこ
 春怒涛 岩にとりつく 波がしら
 空海忌 山より高き 雲ひとつ
 空海忌 こころの澄めば 書も澄みて
 悟りとは 無縁の日々や 空海忌
 隠沼の 夕さざなみに 残る鴨
 願はくは 春に漂ふ 雲に乗り
 起立礼 着席祝辞 卒業す
 卒業す あの子はとらぬ 胸ボタン
 好きな子を 遠くながめて 卒業す
 校庭へ 深く一礼 卒業す
 制服を 脱ぎて晴れやか 春動く
 実行キー 押せば完了 卒業す
 将来を 立つる人たれ 卒業す
 疾走す卒業といふ 通過点
 コロナ禍や 十五の春を 愉しめず
 棘隠す 十五の春の ポケットに
 遍路ゆく 過去の自分を 捨てながら
 風船や 夢売り人が 笑ひ来る
 風船に 息の限りを 入れにけり
 父の息 こめし風船 子に渡す
 風船や 去りゆくものは 帰り来ず
 集めたし 吾子浮くほどの 風船を
 紙風船 へこむがままに 宙に浮き
 春天を 音なくゆるり 飛行船
 海よりの 風を掴みて 喧嘩凧
 いかのぼり 「喧嘩御法度 凧」になる
 わが星を 宇宙へ揚げよ 奴凧
 揚凧の 天下広しか 下りて来ず
 凧墜ちて 詫びの手を添ふ 盆の窪
 目薬をさす 春天へ口開けて

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