寒 椿
 
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    2022年 新年・冬 ( 5 )   *  
 空に星 畑に霜置く 峡の夜
 北限の 星見し夜や 霜深し
 強霜や 山家夜更けの 闇きしむ
 この道は いつか来し道 霜の道
 再びは 生まれ来ぬ世ぞ 霜一夜
 日に痩せて ひと夜に太る 軒氷柱
 これはもう 天女が絹衣(すずし) 草氷柱
 持ち上げて 崩れて消ゆる 霜柱
 霜柱 解けて残りし 土柱
 底冷や 老いが足より 忍びよる
 肩抱きて 諫め励ます 声凍つる
 寒晴へ 低き鼻梁を 突きあぐる
 寒晴へ つの突き出して 犀の息
 魂叫ぶ 凍裂音の 響く夜に
 寒月下 胸に透きたる 骨に色
 寒月光 闇透き通る まで歩く
 人遠し 寒夜の月も 近からず
 烈風の 磨きし闇や 寒北斗
 寒北斗 地球まはれば 北天も
 極北の 空にしあれば 星冴ゆる
 南天に ひふみよーいつ 六連星
 星冴えて 眼下に街の 灯かりかな 摩耶山・掬星台
 天然の 氷切り出す チェーンソー 自然体感展望台 六甲枝垂れ
 氷室へと 厚さ三寸 氷板
 冬錆の 錨おろして ロシア船
 寒風に 古りし墓石の 露西亜文字
 尾根越えの 寒風痛し 鉄拐山
 飢寒の地や 開墾するも 易からず 北海道開拓史
 一鍬も たたぬ寒土を 掘りてみる
 殺光/焼光/略光 支那寒し
 満州や 氷りて硬き 兵の糞
   満州の兵舎のトイレには、氷った糞が円錐形に嵩なしていた。
   その先端をカナヅチで壊してからでないと、新しく糞することができなかった。
   中学の教師が、何度もそう語っていた。
 シベリアの 凍土に眠る 捕虜の骨
 ソビエトに沍つ 幻のコンミューン
 極寒の 夜の死なずば 朝は来ず
 鎌鼬 絆創膏の 痛ましく
 狼の遠吠え 闇を突き抜くる
 狼の あと追ふやうに 人滅ぶ
 狐火や 闇でまなこを 洗ふ間を
 狐火の 正体見たり 諏訪稲荷
 寒雷や 愚鈍にささる 犀の角
 寒雷や 天地のひかは 受くるなく
 寒没日 老いが身内の 気も失せて
 寒林や 明るき空に 枝はりて
 日だまりを 選りて寒林 通り抜く
 寒ぼたん 助六傘の 影が下
 みづからの 深紅に朽ちて 冬薔薇
 寒椿 死は垂直に 落ちてくる
 寒椿 一輪落ちし 後の寂
 寒桜 鳥一羽だに 寄らしめず
 寒禽の一声 空を裂きあがる
 寒の鴨 尻つき出して 藻をあさる
 俺のこと 阿呆と嗤ふ 寒鴉
 逃げ迅し 影置き去りの 寒鴉
 だみ声を 残して去りぬ 寒鴉
 餌やれば 鳩に遅れて 寒雀
 寒鶯や 歌を思ひて 声のなく

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