日 傘
 
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      2021年 夏 ( 25 )   *  
 雲海の 上を仙人 軽々と
 炎天や 悔し涙を 手でぬぐひ
 夏雲や マグヌス効果 大魔球
 雷雲に消えて ステルス戦闘機
 雲の峰 憤怒のこぶし 突き上げて
 波立つや 檣頭に触るる 雲の峰
 遠雷や 夜空を焦がす 匂ひして
 日雷 へそ出し少女 駈けもせず
 雷雨来る 六甲の山 傾けて
 雲上の 宴にぎやか はたた神
 怠惰なる 我に一喝 はたた神
 雷光に 一拍置かず 大激震
 雷激す遅れて隠す石頭
 間近きを 恐れて次の 雷を待つ
 打たれ死ぬ 喜悦に震へ 雷を待つ
 余すなく 街を洗ひて 夕立過ぐ
 虹軽ろし 天の秤も 傾かず
 空想の 翼ひろげて 虹渡る
 虹吸ひて 生えし翼や 天翔くる
 虹の骨 拾へばこころ 軽くなる
 誰ぞ見む ありさうでなき 虹の裏
 海夕焼 帰港の船の 水尾長し
 缶蹴りの 靴の弧のさき 夕焼空
 どの子にも 帰る家あり 夕焼空
 夕焼けて 平家贔屓の 鐘の音
 夏座敷 庭見る背ナに 床柱
 水打ちて 路地に光を 撒き放つ
 水打つや 土よりのぼる 日の匂ひ
 水打ちて 開店準備 ととのひぬ
 水打ちて 深まる 庭の高湿り
 白靴や 波止の先まで 音立てて
 空仰ぎ 眉をひそめて 日傘さす
 烈日に 傘布薄き 白日傘
 呼びとめて 日傘傾げる 須磨女
 夕日へと 歩む日傘の シルエット
 白日傘 閉ぢずに夕の 波止が先
 糊のきく浴衣や 背筋伸ばし着る
 サンドレス 空きし肩より 羽伸ばす
 躾糸なしや 手作りサンドレス
 半端かも ノーネクタイの 夏背広
 ひとり身や 開襟シャツの 襟黄ばむ
 アロハシャツ 齢隠せる はずもなく
 アロハシャツ ジゴロが肩を すぼめ来る
 白地着て 戦中戦後 生きし人
 うすものの 透けて女体の 息づける
 羅や 貧しき背ナを 隠せざる
 羅に 父の老いざま まぎれなし隠せざる
 羅や 中身も薄き 我なれば
 甚平に ラウンド髭の 老紳士
 甚平が んの字になりて 爪を切る
 
 
 膝打ちて 立てば甚平 皺多し
 甚平着て 浮世離れの 啖呵切る
 甚平着て 女難の相と いふ不思議
 甚平や 立てばがに股 かに歩き
 甚平や 短足なるを 恥ぢもせで
 甚平着て 世のしがらみを 嘆く人
 甚平着て あんぽんたんの 木偶の坊
 万歳して 幼な子サマー ドレス脱ぐ
 半ズボン 若き美脚を 惜しみなく
 おはやうさん 青き網戸の 向かうより

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