枯  葎
 
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        2020年 冬 ( 1 )   *  
  1  これもまた フェイクニュースか 冬立てり
  2  冬立ちて 我は巣ごもり 木偶の坊
  3  海峡の 千尋の波頭 冬に入る
  4  谿深く 水音細く 冬に入る
  5  うす色の 冬の紅葉の 峡が里
  6  紅葉散る 音なき風に ためらひつ
  7  余りにも 軽ろく虚空を 散紅葉
  8  老い人の 死するは軽ろし 紅葉散る
  9  紅葉散る 名のみを残す 二軒茶屋
 10  冬めきて 仏の目すら 濁るがに
 11  凩に 自由平等 博愛旗
 12  凩や 街干乾びて 翻る
 13  凩や 乗るも降りるも 縄電車
 14  凩や 葉屑たまれば 迷子道
 15  凩や 大き葉小さき葉 飛んでゆけ
 16  この道は 落葉降る道 積もる道
 17  落葉道 日向をゆけば 音軽ろく
 18  踏みしめて 日陰落葉の 音湿る
 19  落葉朽ち 土にもどるを 踏みてゆく
 20  落葉掻く 掃き寄るもの みな軽ろし
 21  落葉掻く ほどにや老の 減らず口
 22  落葉掻く ひと掃きごとの 後憂ひ
 23  掃くといふ ブルシットジョブ 落葉降る
   デヴィッド・グレーバー著
   『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』より
 24  煙のみ 見えて昼間の 落葉焚
 25  落葉焚く 煙にむせて 待つ子らよ
 26  末枯野 後を思はず 旅に出づ
 27  枯野行く 貧しき背ナを 風に見せ
 28  枯野より 弾けとぶかに 雀立つ
 29  近道を 行きて枯野の 迷ひ人
 30  迷ひ来て 影を失ふ 枯野かな
 31  枯野行く 大字小字 番外地
 32  枯野末 道は無窮に 続くがに
 33  迷ひ道 藪を抜ければ 枯葎
 34  風絶えて 薄き日影の 枯葎
 35  ひと入れて 紅一点の 枯葎
 36  捨て猫に 明日はいづこの 枯葎
 37  山峡の 風に痩せたる 枯尾花
 38  憤死てふ 最期もあるか 枯尾花
 39  風蕭蕭 枯野に星の 青き夜は
 40  道絶ゆる 先は枯野の あるばかり

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